私の園は、国、県、市いずれからも補助を受けていないので、思い切った自由な保育ができます。どの保育室にも、年長・年中・年少さんが混じって一緒にいるのです。食事をするのも、おやつを食べるのも一緒なのです。これを縦割りといいます。三歳未満でも是非入れてほしいと言われると、私のところでは何も規則にしばられることはありませんから二歳八ヶ月くらいになると、このお子さんなら大丈夫だなぁと見ると入れるのです。生活面では、年長・年中・年少が一緒だから、年長・年中児はお姉さん、お兄さんらしくやれるし、また小さな子どもはお姉さん、お兄さんにいろいろ助けてもらっているのです。それで、さっき言ったように小さな子を励ましていることもよくあるのです。今の子どもたちには、兄弟の味を知らない一人っ子が少なくありません。だが縦割りですから、三歳で入園すれば、お兄さん、お姉さん代わりがいます。そこでちゃんと異年齢の交わりを学びます。
また生活面の縦割りと共に、年齢的な横割りも取り入れます。年長・年中・年少の間には能力にかなりの差があります。年長さんになりますと知的能力に大した子がいます。かりに、生まれて七歳でその子どもの知的能力が、平均より三割以上だと九歳並みですから四年生の力を持っているわけです。また反対に年長さんなのに四歳並みという知的能力の低い子もいます。そんな九歳の能力から四歳の能力までの子どもを三十人も、一人の先生で指導することは、とても難しいことです。ところが、お父さん、お母さん、おじいさん、おばあさんたちが自由に参加して下さると楽になるのです。
私の園では黒板はありません。一斉に指導するということはやらないのです。子どもたちが自分でやりたいことをやる、というやり方です。朝、子どもが入って来ますね。「おはようございます」と言って挨拶をする。手を出して握手することもありますね。うしろから肩に手を当てて「おはようございます」と挨拶をすることもあります。挨拶は大切ですね。調べてみますと、家庭で朝起きて親子が挨拶をしない家が大分ありますね。むしろ他人と挨拶しても親子で挨拶しない、そんな家庭があるのです。皆さんやっていますか。起きてこられると顔を見て、にこっとして「おはようございます」と言われますか。お子さんが起きて、にこっとして「おはようございます」と言われますか。そういう言葉のかけ合い、体の触れ合いは大切ですね。そういうことで朝が始まりまして、子どもたちはそれぞれの室に入ります。そして子どもたちは出席のシールを貼ります。
シールを貼ると自分のカバンや持ち物を、自分の置くべき所へ置きます。それから自分の担当の先生のところへ行きます。 三歳児は三歳児担当の先生のところへ、四歳児は四歳児担当の先生のところへ、五歳児は五歳児担当の先生のところへ行きます。すると先生は「今日、何をやりたいの、何をうまくやりたいの」と聞きます。ある子は、「今日は縄とびを十回以上とべるようになりたい」とか、ある
いは「鉄棒をこれまでより、よけいに回れるようになりたい」とか、あるいは「今日は一から百までの碁盤の目の枠に間違いなく早くカードを並べたい」などと、その日に自分でやりたい目標を言います。そうすると先生は「あ、そう、それじゃ、しっかりやってね」と励まします。 子どもはよくやります。すごいですね。